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皆さんコンニチワ
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盛岡店のトーチャンです
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『東北のくせに暑すぎぢゃん!』という日々が続いていますが、皆さん体調にお変わりはありませんか?
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本日は、古いテントの修理のエピソードをご紹介します
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ある日の夜のこと
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『テントのポールが折れちゃったんですけど、修理するパーツってありますか?』
というお客様がお見えになりました
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うちの店に置いてあるのはMSRの【テントポール リペアスプリント】という製品
MSR テントポールリペアスプリント

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これは、折れたポールに一回り大きな直径のスリーブを被せ、ガムテープなどで固定して急場を凌ぐという『現場で使う緊急用の道具』という位置付けの商品なんです
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商品説明をしながら『もしかして折っちゃいました?』って聞いたら『はい、折れちゃいました』ってw
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『お急ぎでなければ、時間がある時に折れた節を交換した方が今後のためにもいいですよ』とご案内すると、古いテントだとのこと
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『昔のテントだから、修理にあまり金額がかかるようだと困るんですよね…』と。
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ちなみにお客様はトーチャンより少し若い感じの女性
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古いって言っても、そんなに昔のものではないよね…
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…と思ったら。。
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なんと、そのテントはなくなったお父様の遺品のテントで、メーカーは【ダンロップ】だという
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ナヌ?
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ダンロップ?!
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だったら修理できる可能性がめっちゃ高い!
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住友ゴム工業系列の《ダンロップスポーツ》時代のテントでも、現在それを引き継いでいる《プロモンテ》ブランドのエイチ・シー・エス社では基本的にポールの直径などは極端に変えること無くパーツを在庫しているんです
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http://www.hcsafe.co.jp/ ㈱HCS 公式HP
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その辺りを話してからテントのカラーを聞いてみたら『本体がオレンジで…』
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『ってことは、フライシートはブルーですよね?』
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『え? そうです!』
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間違いない、1980年代半ばに発売されたダンロップの山岳テントの定番カラーだ!
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高校大学と、クラブの備品としてさんざんお世話になった定番の山岳用テント
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あれなら秀山荘在籍時に何度もポール修理をやったことがあるので、ポールのサイズが分かれば折れたり曲がったりした部分の節を取り寄せて店内で修理できる!!
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つまり、メーカー出し修理より圧倒的に安く修理できちゃうってわけ。
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『お時間あるときに現物を持ってきていただければ、それを拝見して見積もり出してみますよ』
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『でも、高いですよね…?』
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『いや、大体ポール1本の値段が1000円弱で、メーカーに出すと工賃も高いけど私が店内で修理するなら工賃は1列で1000円くらいからです』と伝えると…
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キュートなお客様と、一緒に来ていた中学生くらいの娘さんの表情が一気に明るくなるのが分かりました
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『え? ホントですか?? 修理してまだ使えるならこれでキャンプに行きたいなって思ってるんです!!』って。
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お父様は天に昇ってしまったけれど、そのお父様が永らく大切にしていたテントで娘さんとお孫さんがキャンプに行くなんて、とても素敵な話。
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これは、何としてでも直したい!
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裏方魂に、一気に火が着いた。
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ただ、テントの品番が分からないとパーツの在庫確認もできない
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ダメ元で聞いてみたら、奇跡的にお客様が暗記していまして…
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『たしか、CHC-7480って書いてました』と。
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この日は現物をお持ちではなかったので、とりあえずエイチ・シー・エス社に品番を伝えてポールの在庫を確認しておきます、とお伝えしました
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お客様がお帰りになってからネット検索すると、どうも品番は一文字違いで、正しくは【CTC-7480】っぽい
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この品番は山岳4人用H型テントで、お客様が言ってた『4人用テントです』っていうのとも一致!
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早速エイチ・シー・エスに電話してみます
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いまの営業担当さんは、秀山荘時代に某メーカーの営業マンで銀座山の会所属だったTさん
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歳は重ねたけどまだまだ現役であちこちの山に登っている、業界の大先輩の一人。
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このテントのことを伝えてみたところ、当時のポールはたしか韓国のユナン製だったが、現在は同じ韓国のDAC製のものになっており、修理に使えるサイズのポールもあるという話。
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後日、現物確認してから改めて詳細をお伝えすることに。
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そして、休暇を挟んで翌々日
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どうも前日にお客様がテント一式を店に持ってきてくれたみたいで、スキーの取付台の上に懐かしいオレンジ色の袋が載っていました
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早速、ポールを袋から出してみる!」
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あの当時の、アルマイト加工されていない無垢のアルミポール
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ところどころ腐食してしまっている部分があるけれど、この程度であれば強度的に問題もないだろうと判断。
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折損は2ヶ所
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もう1本曲がっている部分があるので、3節を交換すればOK!
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ポールを繋ぐショックコードも、少なくとも30年は経過しているのでこの機会に交換することにします
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ショックコードを抜く前に、まずはポールの構成図を描き出しておきます
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コードを抜いてバラバラにしてから構成が分からなくなったりしたら大変なことになりますw
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片方に突起があれば《片オス》・両方に突起があれば《両オス》・逆に両方とも突起が無いただのパイプなら《両メス》と呼びます
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で、交換すべきポールは【550 片オス】が3本
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オスの突き出し寸法は50mm、ポール直径は11mmです
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早速エイチ・シー・エスに電話して在庫を確認すると、現行品は無垢のアルミではなくカラーが付いていること、突き出し寸法が50mmから40mmになっているが強度的にも使用に差し支えないとのことで、1節あたり税込み880円でした
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袋についているピスネームには、間違いなく【CTC-7480】と書かれています
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ちなみに、このテントの形状及びカラーはこんな感じ
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(写真はネットより拝借)
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出入り口にフライシートが庇のように延びており、オプションで前室が作れる【サイドフライ】が設定されていました(トーチャンも使っていました)
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ダンロップは吊り下げ式のテントの先駆けブランドで、どんな悪天候でも少人数でサッと組み立てられるのが特徴
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大型のものでも、その気になれば一人で10分もかからず設営できてしまうのもダンロップならではでした
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さて、翌日には交換用ポールが入荷 (Tさん、素早いお手配ありがとうございました!)。
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で。
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ここからが本題。
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この時代のダンロップテントのポールにはちょっと特徴というかクセがあるんです!
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これ、先端部分。
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拡大すると…
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先端のポールエンドに石突きが無いw
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『これショックコードどうやって固定するのよw』と、普通のショップの店員さんだとお手上げになると思います
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で、どういう構造になっているかというと…
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石突きとは逆側の、中間ポールとの接合部を引き抜いて…
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そのまま先端ポールに入っているショックコードを力任せに引き抜く!
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すると…
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こんな感じでポール内径ギリギリのワッシャーにショックコードが玉結びで括り付けられており、これが内部に叩き込まれて固定されているという構造。
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にわかには信じがたいけれど、これが昭和のダンロップ流。
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ポールエンドに石突きを付ける方がアルミパイプを絞ってテーパーかけるよりコストかからないように思うんだけど…w
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どうしてこういう設計にしたんだろ。。
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んでもって、新しいショックコードをセットします
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ここからがテクニックの見せ所!
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マイナスドライバーをワッシャーに当て、丁寧にコンコン叩いていきます
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…が、一発では決まらず、ワッシャーが反転したり微妙に曲がったりして何度かやり直し
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なんたって20年以上やってなかった作業だし(と言い訳してみるw)
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で、ふと閃いた。
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折れちゃって捨てるだけのコレ。
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ワッシャーを少し叩き込んだら、この折れちゃったポールのオス部分をワッシャーに当ててハンマーでコンコンやっていけば、ワッシャーは正しい向きのまま入っていくよね♪
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こんな感じで、時間をかけてコンコン叩いていきます
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先端が潰れぬようにゴムマットの上で作業。
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一気にスコン!と決まるわけではなく、他の部分に負担をかけぬように1ヶ所あたり3~5分くらいかけて少しずつ叩いていくのがポイントかな
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この方法、30年前に閃きたかったww
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で、こんな感じにセット完了
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強めに引き、コードが抜けないのを確認したら完成ですっ!
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もし使用中に抜けてしまうと、一般の人が修復するのはまず無理。
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必ず、引っ張って抜けないか確認します
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ちなみこのラインはH型の脚部で、反対側のポールエンドはメスになっている。そのため、ショックコードは長めに切ってテンション調整する必要がある。
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最初にドンピシャに切ってしまうと、ライン末端のメス側からショックコードを引き出すことができないため
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固定方法は、ショックコードにワッシャーを結びつけて手を離すだけ
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コードをカットする前にポールを畳んだり伸ばしたりして、テンションを確認します
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下の写真は折れた部分を交換したもので、他の2節は既にコード交換済み
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ちなみに、DACの《PRESS FIT》というタイプが使われているみたい
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調べてみると、軽量さ重視とか強度重視とかで何種類かあるようですね
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トーチャンが若い頃はDACなんて存在すらしておらず、テントポールと言えば韓国のユナンかアメリカのイーストンでした
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オレンジがかったゴールドカラーのイーストンポールは信頼性も高かったなぁ…
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いまは名前を聞かなくなってしまったけれど、どうしているやら…
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さて、屋根の部分のラインもショックコードを交換し終え、幕にポールをセットして全体を点検・確認します
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袋には懐かしいダンロップの【D】のロゴ
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それにしても、ポールは年季が入っているけれど袋も本体もとても状態が良い!
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本体にも誇らしげに【DUNLOP】のパッチ。
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幕には汚れが見当たらず、新品のような生地の張りが残っています
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時代を感じさせるパーツ
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ポールエンドを差し込む本体四隅のタブが本革で出来ています
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本来は小さな穴の方にも金属のハトメが付いているのですが、欠落していました
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現在のテントはナイロンテープに鳩目が打ち付けられているのが標準ですね
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さて、幕を広げザッと目視で点検していきます
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特に破れなどは見当たらず、むしろ30年以上前のテントなのに全体的に状態が良すぎることにビックリ
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お客様のお父様が保管前の手入れも含めてとても大切に使っていたことが伝わってきて、感動してしまいました
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まずはポールを組み上げ、そこに本体に縫い付けてあるフックを引っ掛けていきます
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わかるかな? 色が濃いのが交換したポール
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下からフックをパチパチと引っ掛けて、天井に横向きのポールをセットしてからてっぺんのフックを引っ掛けたら完成!
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懐かしいカラーと形状!
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これ高校の部室にあったよな、たしか…
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次にフライシートを広げてみます
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カメラのホワイトバランスの関係で白っぽく写っているけど、生地の劣化はありませんでした
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そして、この時代のテントはフロアも含めてシーム処理(縫い目の目止め防水処理)をしておらず、その事が幸いして『シームテープの劣化』が無かったのがラッキーでした
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シームテープの糊が古くなって剥がれてしまうと、剥がれた原因は糊にあるために新しいテープを上から熱圧着したところですぐにまた剥がれてしまうんです
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なので、もし自分で手入れするならチューブ入りの製品を使った方がいいかもしれません
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そして…
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軒先のポールを受けるパーツも革製!
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フライシートにも【DUNLOP】のロゴが誇らしげに縫い付けられています
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あの頃はダンロップってある意味でステータスだったもんなぁ…
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そして、この光沢!!
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『新品です』って言われても分からない程の生地の光沢が残っていました
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当時のトップグレードのテントの品質の良さに、改めて驚きます
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もちろん、手入れを完璧にしていたからこその美しい状態
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どんなところを旅してきたんだろうか…
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フライもぐるっと一回りして、ペグの固定部分なども破損や列が無いか点検していきます
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そして、サイドのペグループにショックコードをダブルループにしたものを取り付けます
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これは学生の頃、突風に吹かれてフライシートのループの付け根が破れてしまった自分の体験から編み出した作戦。
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20代の頃に毎年秋の北海道ツーリングで愛用していたマジックマウンテンのテントにも装着し、台風の直撃を喰らってもトラブル知らずだったのとテントのラインが美しく設営できるので、今回はサービスでセットしておきました
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何のことはない、ただこれだけのものなんだけど…
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テンションかけてみると…
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こんな感じになります
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シングルだとテンションが弱すぎるので、ダブルループにするのがポイント!
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今回の修理費用は、ポールが@880×3本とメーカーからのポール送料が1200円・ショックコードの固定が難しい作業だったので工賃が2000円、それにショックコードが使用した長さの実費で、トータル6000円ちょい
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若い頃に在籍していた店の先輩たちから教わったスキルの範囲内でポール修理ならば大体のことはできてしまうので、なるべく店内でできることは店内でやることにしています
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時間的にもメーカーに出すより圧倒的に早いし、値段も安く仕上げることができてお客様にも喜んでもらえますしネ!
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全体の点検を終えてお客様に修理完了の連絡を入れると、翌日早速引き取りにお見えになりました
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この日はお母様もご一緒に。
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ざっと作業内容をご説明して点検の結果本体もフライも問題ないとお伝えすると、とても素敵な笑顔で喜んでくれました
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レジでお会計の最中に、お母様に『このテントでいろんな山に行ったんですか?』と訪ねてみると、登山というよりはキャンプであちこち行ったそうな
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修理をご依頼された娘さんが小学生の時から使っていて、帰ってくるとお父様はすぐにテントを洗って乾かし、とても大切にしていたとのこと
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フロアには泥汚れのシミが少しだけあったけど、本体のウォールやフライシートが新品レベルの美しさを保っていたのは、やはり手入れが完璧に行き届いていたからだったんですね
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なんでも生前のお父様は新しい物好きで、このテントも発売直後に購入されたと教えてくれました
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その他にも、コッヘルとかガスランタンとかバーナーとか、当時の最新式のものは一通り揃えていたと。
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で、『まだ家に使えなくなっちゃった古い道具があるんですけど…』って
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EPIの緑のプラスチックケースに入っているガスランタンが付かなくなってしまっているみたいだけど、これは使用年数をお聞きした上で【ガス器具の寿命】とご説明。
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『それ以外のものは、もし使い続けたいのならいつでも持ってきてくださいね』とお伝えしました
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新しいものに買い換えるのは簡単だし、その方が安全かもしれない
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けれど、古いものを手入れして長く使い続けるのもまた、大切なことだと思うんです
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ましてや、その道具に素敵な思い出が詰まっているとしたら…
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持ち主だったお父様は天に昇ってしまったけれど、娘さんやお孫さん、もしかしたらお母さんもまた、このテントと共にどこかの山で楽しい夜を過ごすことがあるだろうか
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世代を越えて受け継がれていく山道具たち
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その長いストーリーのほんのひとつの瞬間に、こうして裏方として深く携われたことが、とても嬉しい出来事でした
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